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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)2310号 判決 1967年6月19日

原告 小野八寿雄

右訴訟代理人弁護士 大島正恒

被告 帝都信用金庫

右代表者代表理事 金子澄之助

右訴訟代理人弁護士 栗原勝

右訴訟復代理人弁護士 古野勇太郎

主文

一、昭和三六年八月一八日東京法務局所属公証人西川精開作成にかかる昭和三六年第二、五三〇号公正証書記載の原告の被告に対する連帯保証債務中訴外梁慶栄の被告に対する昭和三六年六月二六日から同月三〇日までの利息金債務金六、三〇〇円についての連帯保証債務は存在しないことを確認する。

二、前項記載の利息に対する右公正証書に基く強制執行は、これを許さない。

三、原告のその余の請求を棄却する。

四、訴訟費用は原告の負担とする。

五、当裁判所が本件につき昭和四〇年六月八日なした強制執行停止決定は主文第二項記載の限度においてこれを認可する。

六、前項にかぎりかりに執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

一、連帯保証債務の存否について、

昭和三六年八月一八日、原、被告間に被告を債権者、原告を連帯保証人とする、東京法務局所属公証人西川精開作成昭和三六年第二、五三〇号抵当権付金銭消費貸借公正証書が存すること、右公正証書によれば訴外安部三郎が、被告の代理人、訴外安藤四郎が原告および訴外梁慶栄の代理人として、昭和三六年六月二六日、被告より訴外梁に対し弁済期同年一二月二五日、利息年一割二厘二毛毎月二五日支払、損害金日歩金六銭の約で金四五〇万円を貸渡し、原告は右梁の債務を連帯保証する。原告が右債務不履行の場合は、直ちに強制執行をうけても異議ないことを認諾する旨の記載があることは当事者間に争がない。

≪証拠省略≫をそう合すれば、昭和三六年六月一九日右公正証書記載の如き弁済期、利息、損害金の定の下に金四五〇万円貸付ける旨の合意が被告と訴外梁間になされ、同日内金二〇〇万円を訴外梁に交付しさらに同月二六日残金二五〇万円(但し書類作成費用等を控除)を交付したことが認められ金四五〇万円について同月二六日から三〇日までの利息年一割二厘二毛の割、日歩二銭八厘で計金六、三〇〇円を控除の上訴外梁に交付したものと確認され、右認定事実によれば、昭和三六年六月二六日に被告主張の如き消費貸借契約が被告訴外梁間に有効に成立したものと認められる。

そして、≪証拠省略≫をそう合すれば、昭和三六年六月二六日原告は被告と右訴外梁の債務につき連帯保証をなすことを合意したものと認めるのが相当であ(る。)≪証拠判断省略≫

ところで原告は右訴外梁の債務及びその利息金債務のうち、昭和三六年六月分利息は天引されているのですでに支払既みであると主張し右事実は前記の通り認定できるが、元金四五〇万円のうち金三〇〇万円について、弁済猶予及び支払方法について被告と合意がなされこの合意に基づき訴外梁が被告に対し利息の支払をなしたことについては、これを認めるに足る証拠はなく、訴外今井と訴外梁間に金三〇〇万円についての利息支払方法について合意があり、これが支払はれたことがあっても、これを被告がこれを知って訴外梁と相通じて梁に右金員を受領せしめたとの事実はこれを認めるに足らず、被告に信義に反する行為があったものとすることはできない。

原告および訴外今村明子と訴外梁との間に右債務のうち金三〇〇万円を訴外今村に供与する合意があったとしても、これは同人等の内部関係にすぎず、被告がこれにつき責に任ずべきものと解することはできない。≪証拠省略≫には金三〇〇万円の元金に対する計算がなされているが、これは≪証拠省略≫によって、訴外梁の依頼により、被告において事実と相違する計算書を交付したものであることが認められるにすぎない。以上認定事実によれば結局被告は原告に対し本件公正証書記載の元本債務、昭和三六年六月二六日から同月三〇日までの分利息金六、三〇〇円を除いた残余の利息金債務、及び損害金支払債務につき連帯して保証すべき債務の存するものと言わねばならない。

二、登記等抹消請求の当否について

原告が別紙目録記載の各不動産の所有者であることおよび、右各不動産につき原告主張の請求の趣旨記載の各登記が存することは当事者間に争がない。

≪証拠省略≫をそう合すれば、被告主張のように原被告間に訴外梁と被告との継続的取引契約の訴外梁の債務の担保のためにその主張の原因により右各登記をなす旨の合意ができ、右合意に基き右各登記がなされたことが認められ、この認定に反する≪証拠省略≫は、≪証拠省略≫に照らし信用することができず、他に右認定を左右するに足る証拠はないから原告の登記等抹消請求は理由がなく採用できない。

三、公正証書作成嘱託代理行為について、

原告主張の如く訴外安部、訴外安藤が被告、原告を代理して公正証書作成嘱託をなし、本件公正証書が作成されていることは前記のとおりであり訴外安藤が被告金庫の職員であることは当事者間に争がないが、≪証拠省略≫をそう合すれば、前記認定の如き連帯保証契約締結と同時に、右連帯保証債務につき、執行認諾文言付公正証書作成の合意ができ、それに基づき原告は不動文字のみ記入されていた乙第一号証の一(委任状)に署名捺印をなし、それを被告に交付して被告に原告代理選任権限を授与したことが認められ他に右認定に反する原告本人尋問の結果はたやすく採用することができないところ、右の合意により任意に嘱託事項を付加する権限のない代理人の選任を相手方に委任した場合には、相手方により選任された代理人が代理行為をなしても何ら民法第一〇八条の趣旨に反することなく結局安藤四郎が原告に代理してなした公正証書作成嘱託行為は有効とみとめられざるをえない。

以上認定の通りであるから原告の被告に対する本訴請求は利息債務金六、三〇〇円の不存在確認およびこの債務につき公正証書の執行力を排除する限度において理由があるからこれを認容し、その他はいずれも理由なく失当であるからこれを棄却すべく、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条第九二条但書強制執行停止決定の認可仮執行の宣言につき同法第五四八条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 荒木大任)

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